「いじめを乗り越えて」

長谷川登美(宮城県)

「学校でいじめられている。もう、死んでしまいたい。」そう言って、中学校に通っていた次女が泣き崩れた。
娘の目が、三重にもなってくぼみ、がっくりと肩を落とした。元気で明るい性格の子供に、一体何が起きたというのだろうか。「青天の霹靂」とは、このことだ。「いじめられていることを親に話すと、もっと酷くなる」と恐れた娘は、たった一人でずっと我慢してきたのだ。やっと重い口を開くと、切なさが先に立ち、私も夫も長女も一緒に泣いた。
その頃は、「いじめに遭って自殺」という報道がよくあった。「まさか我が子が…。どうしよう」考えても名案は浮ばない。先生が、家庭訪問してくれた。が、いじめっ子には、直感で「先生に言いつけた」と、分かるらしい。いじめは、さらに度を増していく。
「こうなったら、家族で乗り切るしかない」と結論を出し、まず、いじめている人の名前を聞いて書き出した。相手を理解することから始める。怒りが込み上げるが、「誰の心にもしこりが残らないよう」祈るような毎日だった。
「休みたい!」と言われれば、「今日は、頑張りなさい」と励まして送り出したり、「いいよ、休みなさい」と、その時の状況で判断。辛く苦しい時が一ヶ月ほど続いたのだろうか。
ある日のこと、いてもたってもいられなくなった夫は、下校時を見計らって自転車を走らせた。そこで見たのは、大勢に囲まれていじめに合っていた娘の姿。短気な夫のとった行動は、何と「娘が悪いのなら謝る。あんたたちの親にも謝りたい」と言って、子供たち一人一人に頭を下げたのだ。その日から、娘へのいじめがなくなった。
その体験は、娘に人を見る目を養わせてくれたのだろう。社会人となった今、大勢の友人に囲まれ、人生を楽しんでいる。何と、あのときのいじめっ子とも、連絡を取り合っているのだから、娘は凄い!

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