「家族に支えられて」
牧野知恵子(石川県)
私は今から五年ほど前に、ある難病に罹った。全身の運動神経が徐々に冒され、最後は寝たきりとなって呼吸不全で死亡されるとされる病だ。当初は歩行時に左足を若干引きずる程度だった状態は少しずつ悪化し、今では両足が不自由となり、杖を使った歩行も時間にして十分ほどしか出来なくなってしまった。
発症の後も、足を引きずりながらなんとか続けていた仕事も辞めざるを得なくなり、現在は日常のほとんどを家の中で過ごしている。
一人での外出はもはや不可能となり、出かけるときは夫か娘のどちらかに車で連れて行ってもらい、場所によっては車椅子を押してもらう。買い物も、二週間に一度の通院も、気分転換のためのドライブも、二人の協力なくしては成り立たない。家族がいればこそ、今の私の生活は維持出来ているのだ。有り難いと思う反面、今も元気な私のように長く存命できないことを、娘に対して申し訳なく思っている。もしかしたら、やがて結婚し出産するであろう娘を応援してあげることも不可能かもしれないと思うと、言いようもなく辛い。
しかし、これは私が置かれた紛れもない現実である。逃げられないものなら、正面から対峙しようと決心した。そして、手がまだ動くうちに、形見になるものを娘のために作りたいと思うようになった。考えた末、モチーフ編みで娘のベッドカバーの制作を始めた。娘が寂しいとき、辛い時、ベッドカバーが私の代わりに暖かく包んでくれることを願って……。
家族で暮らせる時間はあとどれ位残っているのだろうか。なんの変哲もないありふれた日常、それがどんなに幸せに満ちたものであるかを、実感しながら生きている。
そして、最後まで精一杯生きることが、私を支えてくれている家族への唯一最大の恩返しだと思う。どんな状況に置かれようとも、ひたすら前を向いて生き続けることが、家族に残せる私のメッセージなのだ。
